フレイル予防~運動の重要性
65歳以上の要支援・要介護の原因は、転倒・骨折と関節疾患を合わせた「運動器の障害」によるものが約 25%を占めます(図 1)。筋肉・骨・関節などの運動器に障害がおこり、歩行や日常生活に何らかの障害を来たし、介護となる危険性の高い状態は、日本整形外科学会が 2007 年に提唱した「ロコモティブシンドローム」として知られています。要介護にならないために、運動器の障害を防ぐことだけでなく、他の要因(認知症、脳血管疾患など)においても、運動の重要性は広く認識されており、要介護の原因の多くは運動により予防が期待できると言えます。
また、高齢者の多くは「フレイル」という状態を経て、要介護状態に移行します(図2)
フレイルとは、日本老年医学会が2014 年に提唱した概念で、身体的・精神的・社会的に虚弱化していくことを指しますが、適切に支援・対策を講じることで健康な状態に戻れる時期とされています。介護予防の観点から運動の重要性が高いのはもちろん、運動の継続と効果を引き出すことがより重要になってきています。
音楽を有効に活用した運動
フレイル予防の 3 本柱である運動・栄養(オーラルケア)・社会参加において、地域活動(自主グループ活動・通いの場等)が重要視される中、様々なプログラムが活用されています。当社団オリジナルコンテンツである「オトフレ♪」は、参加者のモチベーションを高め、心地良く(feel good)、「心身機能の活性化」、「自分を研磨する」、「生活への刺激」など、多岐にわたり高評価を得ています。
音楽に合わせて体を動かすことは、認知機能とも大きな関わりを持つことが報告されています。音楽に合わせて運動するには、動きとバックに流れる音楽を連動させることが必要であり、そのためには、運動をしながら音楽を聴き、その曲のリズムやテンポを分析し、それと運動が合っているか否かを判断し、さらにその結果を自らの運動にフィードバックするという操作を同時に行う必要があります。これは非常に複雑な認知課題であり、音楽を有効に活用した運動は、健常高齢者の認知機能維持・改善だけでなく、認知症に対する非薬物療法としても有効とされています。
本養成講座について
本養成講座は、「音楽レ・クリエーション指導士」3 級、2 級養成における介護予防、認知症予防の知識をブラッシュアップし、健康づくりに関わる「健康科学」の基礎知識を取り込み、音楽を有効に活用した 地域における健康づくり、介護予防活動の指導者として具体的 実践的な指導ができる「健康レ・クリエーション指導士」を養成する講座です。指導の現場にて直接役立つ「運動理論」に基づいた講義と実技を身につけるための内容となっています。
・指導者誘導型の健康づくりだけではなく、参加者自身が楽しみながら健康づくりの活動を実践でき、従来の指導に加えて参加者がより一層自発的な活動・行動ができるように促し、参加者一人ひとりの抱える課題を解決するための指導が展開できることを目指します。
・デモレッスンやロールプレイングによって、指導のサークルを学び、音楽を有効に取り入れた方法で「より楽しい現場づくり」・「心地の良い(feel good)場所づくり」・「また会いたい指導者」になるためのスキル UP をしていきます。
特にフレイル予防に関して、音楽を有効に活用した「オトフレ♪」カリュキュラムでは、運動・口腔ケア・栄養を講義と実践を兼ね備えた内容で、実際の音源等やソングリストを提供し、即現場で指導できる様にサポートします。
本養成講座は、東京都健康長寿医療センター研究所から発行される「介護予防運動指導員」養成講座の受講資格要件に認定されています。
カリキュラムについて
カリキュラム1 健康づくり・からだに関する基礎的な知識の習得
科目名 | 内容 (健康・体力づくり財団健康運動実践指導士養成テキスト) |
健康づくり施策概論 | ・健康の概念、我が国の現状と健康づくり ・生活習慣病とその予防 |
運動生理学 | ・運動とエネルギー出力系 ・運動と筋・神経系 ・発育・発達の概論、老化の過程と機能変化 |
機能解剖学とバイオメカニクス | ・骨格、筋、心臓、血管の構造 ・バイオメカニクスの基礎 |
健康づくりと運動プログラム | ・トレーニングの原則 ・健康増進のための指針の具体例 ・運動プログラムの具体的考え方、目標設定 ・運動のプログラミング |
健康づくり運動 楽しさ・コミュニケーション を重視したデモレッスン ロールプレイング |
・介護予防における運動の重要性 ・ストレッチング ・エアロビクス ・レジスタンスエクササイズ |
カリキュラム2 オトフレ♪(音楽を有効に活用したフレイル予防プログラム)
カリキュラム 「あたまとからだのオトフレ♪」
椅子座位プログラム
科目名 | 内容 |
1,チェアヨガ | ・チェアヨガの効果とベネフィット ・しなやかで若さ引き出すチェアヨガ(ウォーミングアップ編) ・貯金より貯筋!動けるからだづくり(筋トレ編) |
2.イメージチェア Feel Good(心地よい) 体験型エクササイズ |
・加齢によるADL(日常生活動作) ・生活機能低下について ・音楽・映像・運動のバーチャル体験型プログラムの効果と指導方法 |
カリキュラム 「オーラルオトフレ♪」
オーラルケアプログラム
科目名 | 内容 |
1,口腔機能とオーラルケア 2.オーラルトレーニング |
・オーラルフレイルとは? お口の役割(食・話・表情・呼吸) ・歌とリズム♪を使った楽しいオーラルトレーニング ・オーラルオトフレ♪にぴったりなソングリストとその活用方法 |
カリキュラム 「栄養オトフレ♪」
科目名 | 内容 |
低栄養改善プログラム | ・低栄養状態とは? ・食の多様性(さあにぎやかにいただく) ・栄養状態と生活機能 ・ワークシートの活用 |
カリキュラム3 発展 カリキュラム
科目名 | 内容 |
貯筋運動プログラム | いつでもどこでもできる自重負荷の筋力トレーニング |
ストレスマネジメント | ・スリープヘルス ・睡眠の基礎知識と睡眠障害対策 ・睡眠と音楽 |
認知症の予防と共生 | ・ブレインヘルス ・脳と音楽 ・パーソンセンタードケア |
健康な発育発達・子供達の健康 | ・キッズ音レク♪ |
多様化する現代社会における新たな健康課題 | ・環境問題と健康 ・がんの現状と最新のがん治療 ・ICTと健康 ・LGBT |